記録

車は思ってた方とは違う、向こうから来た。
すかさず少しの恥を捨てて大きめに手を振る。
車は近づいて顔が見える。嬉しい。
ドアを開け、お待たせしましたって言うと、大きめの声で冗談交じりに、ほんとだよー!って。嬉しい。
機嫌が良さそうだ。

髪切ったんだねって。音楽聴けるようになったんだねって。そうなんだよーってこれも大きめの声で。
でもいつもはラジオを聴いてて、昼でも、夜勤の時の夜中でも、結構面白いんだって。
深夜のラジオって、下ネタ言ってそうって言ったら、そうそう、でも案外昼から言ってるんだって。結構エグい。例えば?って聞いて横顔を見た。一瞬だけ。結婚してる人が、義理の親に向けて、浮気してますよーとか言ってるって。それは確かにエグいな。

ガソリンスタンド、後ろ姿、横顔。あいみょん
セルフ怖そうって言うと、ノズルかなり長いよ?って。
ショッピングセンターに入る。
綺麗目スラックスじゃないんだね?って言うと笑った。シャツは一着しか持ってなくて、自分家で洗濯できないって、それどんなシャツやねん。
ビアードパパの新作、美味しそうって言うと、食べる?って。
太っちゃったからいいって言ったけど、1.5キロなんて変わんないじゃんって。
彼の御目当ては見つからず。
一緒に来たことあったよなって、子供服屋を通ると思い出したけど、彼は覚えてるのかな。
小さい子の髪はワンブロくらいがいいだろって。

電気屋、電子レンジが喋るぜって。
ストレートヘアアイロン、薄すぎる4Kテレビ。
将来自分家は壁掛けにするとか、スペースを作るだとか、電化製品は黒めでオシャレにとか。
そう言われて想像して考えるのは、そこに誰と住んでるのかなって。
こんな事思わせるのはあなただけだ。悔しい、悲しい、虚しい。でも、楽しくて嬉しい。
akgせんぼんなんちゃら。咲いてたらなぁ。

あれ、この人こんなに大きな声で、テンポよく話してくれるんだっけ。嬉しいな。
今思えば、最近まで一緒にいた人がとにかく会話が続かなかったから、そう思うだけだったのかな。

コンビニ、自分が用を済ませてる間、自分の買い物するでもなく、近くでひょこひょこしてて、愛おしかった。
お菓子買おって、それも可愛い。
300円、それでコピーしなって言って奢ってくれる。

ちょうど仕事の時間って言ってラジオをつける。
静かに、たまに2人でクスって言いながら。
電気屋二件目。兄弟と被るって、避けながらも決めた。
コーヒーショップ、これも奢ってくれる。いーよ!って言って。これでコピーしなって。

楽しくて、嬉しくて、辛い。
自分はこの人にとって、どんな存在なんだろう。
この前のステージで少しは見直してくれたかな、って聞きたかったけどなんで聞けなかったんだろ。
聞いたらきっと、うん、すごいと思ったよ。そう言うだけだったと思う。それ以上を期待できなかったから怖かったのかな。

今まで2人で写真なんて撮ったことなかったし、むしろ映されるの嫌いだったのに、自分から誘ってきてくれるって、もうそんなのズルイよ。
何度見返したことか。最後にニコって片方の口角が上がるのが嬉しい。楽しかったのは自分だけじゃなかったのかなって思えるから。

これ以上想える人なんて、現れるのかな。私はこれからどうなるのかな。この人が誰かに決めたら、それでも今まで通り笑って生きていけるのかな。
どうしたら、想わずに過ごせるの。