可哀想 情

電話で母から、その気がないならもうきりをつけたら、なんか話聞いてて相手が可哀想になってきた。と言われた。
自分のドライな所も、そこさえ好きと言ってくれたけれど、でもそれが寂しくて、彼はこの前そういう話をし始めたはずなんだ。
私はそこまで言ってくれてる人にきりをつけようとするのが、可哀想でならないっていう情と、自分が悪人になりたくないっていう、そういう嫌な奴の気持ちで、今のままでいようと思っていたけれど、
母にそう言われたら、もうどうするのが1番傷つけないで済むのか分からない。

それまで、母の病院の診察の面白エピソードや、ファッションの話とか、すごく楽しかったけれど、暗い気持ちで電話が終わってしまった。

自分を好きになってくれる人を好きになれたらいいのに。ってストレートに言っちゃってる歌詞があるなぁ。

1番状況を分かっている友達には、取り敢えず、思ってなくても「好き」って言いな、って言われている。
彼女は、上手くいってないカップルなんて、必ず原因があるんだから。それを解決しようと思えば出来るんだから。お互い良い気分でいられるように思いやれてないなんて、勝手だし子供だって、そんな事を言っていた。
当人達に置き換えれば、その原因は私だ。

私が表向きだけでも、もっと可愛く甘く、「好き」と言えれば済む事なんだ。
昔から嘘をつくのが苦手だったけど、ただ不器用で苦手なんじゃなくて、人に嘘をつくっていう行為が相手に悪いようで、だから、そういう部類の苦手だったのかもしれない、って気が付いた。
優しい嘘。
そんなのできない。
これは意地?
だめだな、自分。なんでその一言が言えないんだろう。

最近はこの事が原因で、どんどん自分が嫌いになる。
それまでは割と自分は誰からも良い人って思われて、気持ちいいなって思ってたのに。

見た目だけじゃない。彼の内面が引っかかってしまう。
大らかさは、言い換えれば適当でルーズ。
交際って何だろう。何のために必要なんだろう。お互い安心して一緒にいたいって事以上に、一緒に成長できる関係であれたら、それが良いなって思う。
でも私が決定的に彼に惹かれなくなった事の一つに、彼から学べたり、見習いたいな、すごいなって思える事が見つからない事が挙げられると思う。
もちろん、良いところはたくさんある。誰にでも、愛想よく接して、とにかく優しくて、愛される。
でもそれって、私も似てるんだ。
だから、新鮮に学べる事とは違う気がする。
いつか友達にも言われた、そういうところ、似てるよねって。
多分、私は付き合っていく中で、また他の人を見てる中で、自分にはない良さを持ってる人を求めてしまうようになったのだと思う。
好きな部分が自分と似ている分、生活の甘さや心の甘さも、自分の直したいダメな所と同じで、それがまた、「それ良くないでしょ!」「でも自分もそうなんだよ」って、叫びたくなる。でもその甘さの度合いが、彼の方が上をいっているのが分かるから、またそれもモヤモヤさせる1つなんだ。

じゃあもっと、ストイックできっちりした人ならもっと好きになれるのかな。
実際そういう状況になったらまた違うのかな。
彼の大らかさが今よりもっと良く見えたりするのかな。
それが分かったら、もっとスッパリできて楽なのにな。

母との電話でも、それからこの前同窓会で会った私の理解者とも、彼のこれからの努力に期待して、取り敢えず様子を見よう、という事になった。
私もこれ以上自分を嫌いになりたくないから、なるべくその事は考えずに、でも彼に会ったら愛想良くいれるように、気持ちをコントロールできたらと思う。

今はそれよりも大事な実技試験に向けて、集中しよう。

grieg:piano concerto 2mvt.